食品衛生学雑誌
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はちみつによる食中毒の病因物質について
最所 和宏豊田 正武高木 加代子佐竹 元吉高橋 悟山本 裕昭葛西 健橋本 勢津斎藤 行生
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1994 年 35 巻 1 号 p. 46-50_1

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抄録

平成4年4月岩手県岩泉町の山林において野生ミツバチのはちみつによる神経毒症状を呈する中毒事故が発生した. この食中毒の原因物質を検索するため. 中毒はちみつ中の花粉の鏡検を行ったところ, Aconitum 属植物の花粉と形状のよく一致する花粉の存在が確認され, その出現率は68.3%であった. また, このはちみつをラットに投与すると神経毒症状を呈した. はちみつ抽出物のTLCによりアコニチンと同一のRf値を示す物質の存在か認められ, GC/MSのフラグメントイオンによりアコニチンと確認した. そこで牛薬中のアコニチン系アルカロイドの迅速抽出精製法に準拠して, 中毒はちみつ中のアコニチと系アルカロイドを抽出し, HPLCにより定性・定量を行った. 中毒はちみつ中のアコニチンレベルは10.7ppmであり, この濃度はヒメダカ致死試験による推足値と一致した. 以上より. はちみつによる本食中毒の病因物質はアコニチンと推定した.

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