2010 年 31 巻 3 号 p. 270-275
3 歳男児で,副鼻腔炎からの鼻性眼窩内合併症の 1 例につき報告した。感冒後に発熱,膿性鼻汁,湿性咳嗽,右眼瞼腫脹と眼球突出がみられた。CT ならびに MRI 検査で右篩骨眼窩板の骨膜下膿瘍の形成ならびに骨破壊がみられた。セフトリアキソンの点滴静注など保存的治療を 2 日間施行されたが右眼球突出の改善がみられず,当院に転院の上全身麻酔下に鼻内視鏡手術を施行した。篩骨眼窩板を介して排膿がみられており篩骨眼窩板の摘出は行わず右篩骨洞と右上顎洞の開放のみを施行した。術後経過良好で右眼瞼腫脹と眼球突出も消失し術後 6 日目に退院した。術後 2 カ月後の CT 検査では,右篩骨眼窩板の不連続性は復元され,右上顎洞ならびに篩骨洞も含気がみられた。小児鼻性眼窩内合併症(骨膜下膿瘍)は一般的に保存的治療が奏功するといわれているが,保存的治療に反応しない症例では時期を逸することなく外科的治療に踏み切るべきであると思われた。