小児耳鼻咽喉科
Online ISSN : 2186-5957
Print ISSN : 0919-5858
ISSN-L : 0919-5858
シンポジウム I 反復性中耳炎の危険因子とその対応
—環境因子としての保育園の現状とその対応—
伊藤 真人
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 32 巻 3 号 p. 254-257

詳細
抄録

  我国において,乳幼児の反復性中耳炎の急激な増加が始まったのは1990年代半ばである。当初からリスクファクターとしての集団保育の関与が疑われていたが,集団保育環境下での薬剤耐性菌の蔓延の状態が明らかにされるに伴って,「低年齢(2 歳未満)の保育園児」がハイリスク群であることが明らかとなってきた。免疫能の未熟な乳幼児期に,上咽頭に多量の病原細菌がコロニー形成していることが問題となる。
  反復性中耳炎の原因として,第一に中耳炎起炎菌の薬剤耐性化の進行がある。さらに集団保育環境下ではウイルス性上気道炎の流行がしばしば起こり,これが誘因となって中耳炎やその他の細菌感染症が発症しやすい。その結果抗菌薬の使用頻度が高まり,これが耐性細菌の選択圧となり蔓延に繋がっている可能性がある。
  対策として考えられる方法は,①肺炎球菌ワクチン,②インフルエンザ・ウイルスワクチン,③保育園の環境整備,④ 2 歳までの休園指導などである。

著者関連情報
© 2011 日本小児耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top