小児耳鼻咽喉科
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原著
頭蓋顔面奇形を有する乳児睡眠時無呼吸に対しての呼吸管理の検討
酒井 あや佐藤 仁志鈴鹿 有子三輪 高喜
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2011 年 32 巻 3 号 p. 431-435

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抄録

  小児睡眠時無呼吸の閉塞原因の多くは口蓋扁桃肥大,アデノイド増殖である。基礎疾患を有する小児の場合,他の要因も加わるため,積極的治療に躊躇することがある。今回,多奇形のある乳児睡眠時無呼吸に対して保存的に気道管理を行ったので報告する。症例は 9 ヶ月,女児。基礎疾患は頭蓋縫合早期癒合,両側第 5 指の弯曲,胸骨形態異常,内斜視など多奇形を合併する。主訴は睡眠時無呼吸発作,覚醒時喘鳴。現病歴は出生時よりいびきを認めていた。母親の観察では無呼吸発作は数日に 1 回,数秒程度の出現であった。呼吸努力も伴っていた。離乳食は円滑ではなかったが,摂食は可能で体重増加も順調であった。日中,覚醒時にも仰臥位では喘鳴を認めていた。6 ヶ月時,頭部 MRI 撮影のため,小児科入院の際に睡眠時酸素飽和度の低下を認め,2010年12月10日精査加療目的に紹介となった。耳鼻咽喉科所見として,両側耳介低位,両側外耳道狭小,アデノイド軽度増殖あり。軟口蓋低位や巨舌なし。喉頭内視鏡観察下では舌根扁桃の肥大や喉頭軟弱症は認めなかった。ABR では,両側60 dB の中等度難聴を認めた。レントゲンおよび CT では上咽頭の狭小を認めた。頭部 MRI では脳幹に明らかな病変を認めなかった。簡易睡眠診断装置では ODI は50回/時間,最低酸素飽和度は53%と著明な酸素濃度の低下を認めた。以上の結果から,中部顔面劣成長による上~中咽頭の狭小化が閉塞性睡眠時無呼吸の原因であると診断した。入院後,睡眠時のみ経鼻酸素(0.2 L/分)投与下にて経鼻エアウェイを挿入し,睡眠時の無呼吸,酸素濃度の低下は認めず,退院となった。退院後も,患児が寝入った後に家族が酸素投与および経鼻エアウェイを挿入していたが,違和感が強く,夜間に何度も自己抜去した。現在は酸素投与下で経鼻持続陽圧呼吸(以下 CPAP)を装着している。バンドで固定され,外れることはなく,夜間酸素低下も認めておらず,経過は良好である。

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© 2011 日本小児耳鼻咽喉科学会
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