小児耳鼻咽喉科
Online ISSN : 2186-5957
Print ISSN : 0919-5858
ISSN-L : 0919-5858
シンポジウム II - 言語発達評価から読み解く難聴児の現状
軽度・中等度難聴児の言語発達—補聴器装用の必要性を考える—
片岡 祐子福島 邦博
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 33 巻 3 号 p. 252-255

詳細
抄録

  近年,新生児聴覚スクリーニング検査の普及に伴い,新生児期から高度難聴だけでなく,軽度および中等度難聴(以下軽度・中等度難聴)を有する児が早期に発見されるようになり,その問題点が改めてクローズアップされることが増えてきた。一般的に軽度・中等度難聴児に対しても,早期からの聴覚の補償は有効な手段であると考えられるが,こうした児では音に対する反応がある程度みられるため,補聴器装用についてのモチベーションが上がりにくく,保護者を説得して補聴器装用へと至る場面で難渋するケースは比較的多い。また身体障害者に該当しない児では,一部の助成制度のある自治体を除いては補聴器購入に際し公的支援を受けられず全額自費で購入する必要があり,その結果補聴器の装用が見送られたまま学童期を迎える児もまれではない。しかしながら,軽度・中等度難聴があるにもかかわらず補聴器装用や適切な介入を行わずに難聴を放置することにより,言語発達の遅れが出現し,学童期以降になると学力や社会生活にまでも支障をきたす可能性がある。一見,補聴が必要とないように感じられる児に対しても,聴力検査に加え言語発達や学力を評価,考慮した上で補聴器や教育的介入の必要性を検討することが重要である。

著者関連情報
© 2012 日本小児耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top