小児耳鼻咽喉科
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原著
伝音性難聴が残存したランゲルハンス細胞組織球症の 1 例
江原 幸茂鈴木 雅明中村 こずえ笹島 ゆう子村松 さやか武茂 高至安井 拓也伊藤 健
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2015 年 36 巻 1 号 p. 45-51

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抄録

  ランゲルハンス組織球症(langerhans cell histiocytosis; LCH)は,小児に好発する稀な全身性疾患であり診断に苦慮することが多い。今回我々は,耳鼻科受診に至る 1 年間にわたり確定診断を得ることができなかったが,外耳道病変の生検が LCH 診断の決め手となった側頭骨,皮膚,瞼結膜,および肺に病変を認めた 2 歳女児の多臓器型 LCH 例を経験した。日本 LCH 研究グループのプロトコールに従ってステロイド・多剤併用化学療法が施行され全身の LCH 病変は早期に寛解した。側頭骨内骨脱灰像は再石灰化となるも,キヌタ骨は溶解したままであった。治療開始から 4 年を経た 7 歳児時点でも伝音性難聴が残存した。小児においては耳漏・外耳道肉芽腫様病変は比較的早期に出現することが多いため,耳鼻科医が全身性小児疾患の中で早期診断・治療に寄与できる疾患の一つと言える。また,治療により側頭骨内病変は寛解に至っても伝音性難聴が残存する場合があるため,長期的な聴力フォローが必要である。

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© 2015 日本小児耳鼻咽喉科学会
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