小児耳鼻咽喉科
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シンポジウム 1―先天性サイトメガロウイルス感染症をめぐる各科の取り組み
小児神経領域における先天性サイトメガロウイルス感染症の知見と当科での取り組み
稲葉 雄二
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2015 年 36 巻 3 号 p. 269-273

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抄録

 サイトメガロウイルス(CMV)の先天感染は全妊娠の約0.3%で生じ,新生児期から症状を認める症候性感染症は全感染の10–20%であるが,軽微な異常を呈する神経発達障害は見過ごされている可能性がある。先天性 CMV 感染症の自験例の検討では,発達段階に応じて特徴的な発達特性を示し,自閉スペクトラム症を呈するものを高頻度に認めた。皮質形成異常はなくても頭部 MRI の白質病変は発達および知能に強く相関することが示唆された。また,新生児期のスクリーニング体制を構築し,前方視的検討を開始した。治療においては,抗ウイルス薬治療による不可逆的な副作用は認めず,今後の長期的な神経予後の評価の下でより適切な時期の治療方法が確立することが望まれる。同時に,神経発達と聴覚の評価と支援を,耳鼻科医と小児科医が連携してより早期から介入していくことが重要である。

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© 2015 日本小児耳鼻咽喉科学会
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