小児耳鼻咽喉科
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シンポジウム 2―小児耳鼻咽喉科領域における遺伝子医療
遺伝医療のあり方について:難聴を中心に
古庄 知己
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2015 年 36 巻 3 号 p. 295-300

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抄録

 難聴を中心に,新時代の遺伝医療のあり方を述べる。遺伝カウンセリングとは,遺伝に関する問題を抱える患者・家族に対し,遺伝に関する整理と疾患に関する情報提供を行うとともに,継続的な心理社会的支援を行っていくプロセスである。難聴に関しては,分子遺伝学上の進歩,新生児聴覚スクリーニングの導入,人工内耳など治療法の進歩により,遺伝カウンセリングのあり方が,子どもの将来の可能性を開くことを重視した最善の支援を目指す指示的対応へシフトしてきている。信州大学医学部附属病院では,平成19年より耳鼻咽喉科の難聴専門医・臨床遺伝専門医と,遺伝子診療部の小児科医・臨床遺伝専門医および認定遺伝カウンセラーが共同で,「難聴遺伝子診療外来」を運営し,主に遺伝学的検査結果説明をめぐる遺伝カウンセリングを行っている。難聴の遺伝医療そして遺伝学的検査が目指すものは,当時者である難聴児・者の健康・福祉の向上であり,そのためには難聴という障害の受容過程が治療・支援計画とともに切れ目なく進められていること,遺伝医療を支える分子遺伝学的基盤があることが重要である。そうした意味で,先天性高度難聴の早期診断・早期介入のプロセスが,遺伝カウンセリング・遺伝学的検査を適切に組み込みながら標準的医療として発展していくことが期待される。

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© 2015 日本小児耳鼻咽喉科学会
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