2015 年 36 巻 3 号 p. 350-355
2006年から2014年の 9 年間に当院で加療した小児頸部膿瘍10例(男児・女児各 5 例)につき検討した。年齢は 3 か月から14歳(平均 5 歳 3 か月)であった。造影 CT での膿瘍形成部位(重複含む)は,後頸間隙 7 例,咽頭後間隙 4 例,前頸間隙 2 例,傍咽頭間隙 1 例であった。膿瘍からの検出菌は,4 例(1 歳以下)が Staphylococcus aureus,2 例が Streptococcus pyogenes で,その他 4 例は菌増殖を認めなかった。手術アプローチについては,咽頭後間隙に膿瘍形成のあった 4 例には全身麻酔下に経口的アプローチが,その他 6 例には経皮的アプローチ(5 例は局麻下,1 例は全麻下)が選択されていた。気管切開を施行例や複数回の切開排膿を必要とした症例はなかった。小児頸部膿瘍に対しては,抗菌薬投与ならびに早期の切開排膿が肝要であり,適応を選択すれば,局所麻酔下の切開排膿も有効で早期治療に直結する。