小児耳鼻咽喉科
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原著
小児咬筋内動静脈奇形の一症例
花田 誠
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2016 年 37 巻 1 号 p. 35-39

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抄録

 動静脈奇形は動脈と静脈の間に正常の毛細血管床を介さずに異常な交通(nidus)を生じた先天性の血管奇形であり,頭頸部領域では比較的発生頻度が低いとされている。今回咬筋内に発生した小児の動静脈奇形の一例を経験したので報告する。症例は12歳男児で,初診時に左下顎部に強咬合にて膨隆し内部に bruit 様血管雑音が聴取される径3.5×3.5 cm 大の弾性軟の無痛性腫瘤が認められた。受診後の頸部エコー検査と頸部造影 CT 及び MRI にて咬筋内動静脈奇形と診断され,3D–CT angiography では左咬筋内に流入動脈として顔面横動脈とこれに連続する nidus 及び導出静脈として咬筋静脈が認められた。治療は外切開による摘出術を施行し,現在まで再発の徴候なく経過良好である。本疾患は自然退縮が期待できないため可及的早期の治療が一般的であるが,第一選択として可能であれば手術療法が望ましく,その術前評価には 3D–CT angiography による血管系の把握が有用である。

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© 2016 日本小児耳鼻咽喉科学会
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