小児耳鼻咽喉科
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原著
残存聴力活用型人工内耳の小児例における有用性:5症例の検討
藤井 直子諸頭 三郎大西 晶子内藤 泰
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2017 年 38 巻 3 号 p. 344-353

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抄録

残存聴力活用型人工内耳(EAS)植込術を実施した高音急墜型あるいは漸傾型の聴力像を呈する小児感音難聴児5例(手術時年齢:6歳から15歳)の術後成績を検討した。EAS術後,全例で低音域の聴覚閾値の温存が確認できた。術前の補聴器装用閾値は高音域で不十分であったが,術後EAS装用下の高音部閾値は45 dB以下に改善した。5例中補聴器の継続装用をしていた4例の術前裸耳,補聴器装用下の単音節聴取成績は,0%から55%と35%から55%であったのに対し,EASでは術後12カ月で70%から95%まで改善した。補聴器装用を中止していた1例においても,術前裸耳55%であったのに対し,EASでは90%に改善した。保護者に実施した音質に関する質問紙では,全ての項目で改善が見られ,達成総合点は術前の「悪い」から術後は,「中くらい」,「良い」の段階へと改善した。以上から,EASは小児例においても有用であると結論した。

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© 2017 日本小児耳鼻咽喉科学会
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