2020 年 41 巻 3 号 p. 319-325
2005年に発達障害者支援法が施行され,吃音は精神障害者保健福祉手帳(以下,手帳)を取得する対象となった。従来,吃音者が手帳を申請希望する目的は成人吃音者が福祉的就労のために行うことがほとんどであった。しかし,今後,吃音者は成人だけでなく小児も手帳を取得し,就労目的だけではなく自分の障害を証明し各方面の支援を得やすくするために手帳を活用する可能性がある。症例は4歳男児。通園先の幼稚園で吃音に対する理解は低く,患児の母は吃音が障害として軽視されている印象を持っていた。母は吃音を障害として公的に証明し周囲の理解を得るために手帳申請の記載を医師に希望,手帳を申請し取得した。母の話では取得後は園で手帳を開示することで一定の配慮を認めるようになった。
手帳申請時には医師の診断書記載が必須であり,吃音を診断する医師の役割が今後も重要であると考えられる。