2021 年 42 巻 1 号 p. 87-91
自動ABRを用いた簡易聴力検査で遅発性難聴を早期診断し,治療の結果難聴が改善した無症候性サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus; CMV)感染症の1例を経験した。症例は現在2歳の男児。出生時の尿を用いたCMV-DNA定性検査が高値であったが,自動ABRは両側Passで他の合併症状も認めないことから,無症候性先天性CMV感染症と診断された。定期的に自動ABRを用いた児の聴力フォローを行っていたところ,生後3か月に片側Referを呈し,日齢119のABRでは右が50 dBHL,左が70 dBnHLとなった。そのため日齢123からバルガンシクロビル塩酸塩(VGCV)16 mg/kg/回の投与を開始したところ,開始24日後のABRで右30 dBnHL,左40 dBnHLと速やかな改善を認め,現在も聴力は正常である。早期診断と早期治療が,先天性CMVによる遅発性難聴の改善に有用であった。