小児耳鼻咽喉科
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症例報告
人工内耳植込み術を施行したATP6V1B2遺伝子変異による先天性重度難聴症例
伊藤 華純高橋 優宏井上 真規小河原 昇村上 博昭榎本 友美
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2022 年 43 巻 3 号 p. 336-342

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抄録

優性遺伝性難聴・爪ジストロフィー(Dominant deafness-onychodystrophy: DDOD)症候群は主に感音難聴と爪の変質または欠損を特徴とする常染色体顕性遺伝性疾患であり,ATP6V1B2遺伝子c.1516C>T[p.(Arg506)]変異によると報告されている。我々は遺伝子変異による先天性両側重度感音難聴に対して,両側人工内耳植込み術を施行したDDOD症候群の1例を経験した。生後3ヵ月で先天性両側重度感音難聴と診断され,遺伝学的検査によりATP6V1B2遺伝子c.1516C>T[p.(Arg506)]変異が検出された。生後5ヵ月から両側補聴器を装用するも明らかな聴性行動の変化は認めず,生後11ヵ月に両側人工内耳植込み術を施行した。人工内耳装用閾値は両側とも音入れ1ヵ月で30~40 dBと早期に安定した。聴性・発話行動評価は術前と比較して術後に改善がみられた。DDOD症候群の報告は少なく,感音難聴に対する人工内耳の有用性が明らかでないため,今後の症例蓄積が必要である。

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© 2022 日本小児耳鼻咽喉科学会
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