2007 年 28 巻 1 号 p. 52-57
小児の急性乳様突起炎について検出菌,治療,入院期間など臨床的検討を行った. 対象は1991年から2005年に入院治療を行った19例である. 4歳以下が18例,11歳が1例であった. なかでも0歳代は6例と最も多く,乳幼児に限れば0歳と1歳で61%を占めた. 中耳貯留液あるいは骨膜下膿瘍穿刺液からの検出菌は肺炎球菌が最も多く15例,GASが1例,菌陰性が2例,MRSAは11歳の1例であった. 肺炎球菌はPRSP,PISPそれぞれ7例ずつであった. 治療はABPC(ampicillin)を基本としているが,PRSPには当初PAPM/BP(Panipenem/Betamipron)の静脈内投与を第一選択として投与していた. しかし,PAPM/BPの肺炎球菌に対する感受性の低下を懸念し,最近ではABPCに変更しているがそれでも保存療法と排膿で治癒した. 入院期間は骨膜下膿瘍の1例と社会的事情のため退院を延期した1例は13日間であったが,他の17症例の平均日数は7.2日であった. また全員が乳突洞削開術を要せずに治癒した.