小児耳鼻咽喉科
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難治性中耳炎の入院治療例の検討
2006年はどう変わったか
工藤 典代有本 友季子仲野 敦子
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2008 年 29 巻 1 号 p. 8-12

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抄録

通常の治療で治癒しない難治性中耳炎の乳幼児で入院治療例数は2006年にはわずか5例と激減した. 入院例の検討を行い,その原因を考察し報告した.
症例は生後10カ月から26カ月の5例で,男児が1例,女児が4例である. 初回急性中耳炎は8カ月から18カ月であった. 全例が集団保育を受けていたが,初回急性中耳炎が集団保育参加の前であったのは2例である. 入院した際の中耳貯留液からはPISPが3例耳から,BLNARが1耳から,検出され,菌陰性が2例であった. IgGと,その分画を測定したのは3例であり,IgGは777,848,668mg/dl,IgG2はそれぞれ54,78,83mg/dlであった. 家族の喫煙が5家族中2家族にあった. インフルエンザ菌の耐性化は進んでいるものの,肺炎球菌の耐性率が減少したことが入院治療を要する難治性中耳炎の減少につながった可能性が示唆された. また,2006年3月にリリースされた急性中耳炎診療ガイドラインの普及により,AMPCの高用量による治療が一般診療所にも普及した結果,肺炎球菌による急性中耳炎に対する治療効果がみられ,入院治療を要する重症例が減少した可能性も考えられる. さらに,2005年に難治性中耳炎の入院例に鼓膜換気チューブ留置を積極的に施行した結果,反復例が減少した可能性も大きいと思われた.

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© 日本小児耳鼻咽喉科学会
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