室内環境
Online ISSN : 2186-4322
Print ISSN : 1882-0395
ISSN-L : 1882-0395
総説
微小粒子状物質の健康リスクに関する近年の知見と国際的な動向
東 賢一
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 23 巻 2 号 p. 129-139

詳細
抄録

1990年代に発表された米国の疫学研究以降, 微小粒子状物質(PM2.5)への曝露と循環器疾患等による死亡の関係が明らかとなり, 国際機関や各国で気中濃度の基準値が定められてきた。 そこで本報では, PM2.5の健康リスクについて, 近年の知見を踏まえて概説する。 世界保健機関(WHO)が2005年に年平均値10 μg/m3の空気質ガイドラインを公表して以降, PM2.5がヒトの健康に及ぼす影響は, このレベルより低濃度でも生じることが近年の疫学研究で明らかとなっており, その量反応関係は, 線形で閾値がみあたらないと考えられている。 今後, WHOと米国環境保護庁は, 低濃度域における近年の疫学的知見を踏まえて空気質ガイドラインと環境基準値を再検討する予定となっている。 WHOは2018年10月末にジュネーブで開催した「空気汚染と健康に関する世界初会合」において, 各国における速やかな取り組みを促しており, PM2.5への曝露で深刻で不可逆的な健康影響が生じることを鑑みた予防的な取り組みが必要である。

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 室内環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top