日本シルク学会誌
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学術論文
高強度系統カイコの交雑による繭糸質および生糸収率の変化
伊賀 正年 飯塚 哲也岡田 英二中島 健一
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2021 年 29 巻 p. 51-57

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抄録

 服飾用だけでなく工業用素材としても注目されているシルクは,他に類を見ない優れた性状を有するが,さらに強度や伸度に優れた生糸の開発が待ち望まれている.これまでに育種により5 g/dを超える強度を有する高強度系統カイコMC502が作出されたが,生糸の収率向上が実用化に向けた課題であった.そこで,MC502と普通蚕品種や繭糸繊度などに特徴を有する品種を交雑し,繭糸性状および生糸収率の変化を調べた.交雑により繭重と繭層重の増大が見られ,繭糸繊度曲線と繰糸成績は交雑に用いた系統の特徴を反映した変化が見られた.生糸の収率を示す生糸量歩合は日137号との交雑において有意な向上が認められた.MC502の高強度繭糸の特性は雑種第一代においても維持されており,一般的な実用蚕品種を大きく上回る優れた強度を有していた.中でも日137号,中515号,MN502との交雑ではMC502と同程度の強度が保持されていた.

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© 2021 日本シルク学会
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