理科教育学研究
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原著論文
光合成の授業におけるICT の活用とその有効性
―小学校理科 6 年小単元「生物と空気のかかわり」に注目して―
平山 大輔森川 英美後藤 太一郎
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キーワード: ICT, 光合成, SPARK, データロガー
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2014 年 54 巻 3 号 p. 419-426

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抄録

小・中学校理科での現在の光合成実験授業には, 気体検知管を用いた反応前後の気体濃度の測定, ヨウ素デンプン反応による光合成産物の検出, BTB 溶液などの指示薬による光合成の確認などがあるが, これらの実験では光合成の過程を直接的に知ることができない。本研究では, 目に見えない科学情報をリアルタイムに計測する情報収集機器であるデータロガー(Pasco 社)の活用を考案し, 小学校理科の光合成の授業で実践してその有効性を検討することを目的とした。まず, 授業での活用に適した植物の選定のため, 身近な植物6 種(ソメイヨシノ, シラカシ, サツキツツジ, ヨモギ, ドクダミ, ジャガイモ)の葉5.0 g を用いて10 分間の測定試験を3 回ずつ行った結果, ドクダミで比較的安定した明瞭な反応がみられた。次に, 三重県津市内の小学校1 校の6 年生4クラスで, このデータロガーとドクダミを用いた授業実践を行った。授業は各クラスの担任教師による演示実験とし, データロガーのモニターを大型ディスプレイに投影する方法をとった。実践後, 児童45名から自由記述式の感想を得た。また, 授業を行った教師4名を対象に, 用いたICT機器類の感想の聞き取りを行った。児童の感想を分類したところ, 全体の84%の児童が光合成の理解を示す記述をし, 特に33%の児童は, データロガーによって可視化された気体濃度の変化過程に言及していた。さらに, 教師からは, 理解の促進という観点に加え, 1 回の授業時間内に光合成と呼吸の実験を完結できるという点からもこのICT 機器の有効性を認める感想が得られ, すべての教師がこの機器をまた授業で使用したいと回答した。以上を総合し, 本研究でのICT の活用は光合成および呼吸の授業に有効であると結論づけた。

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© 2014 日本理科教育学会
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