2014 年 54 巻 3 号 p. 393-401
二酸化窒素を用いた化学平衡の移動を示す実験教材は, 多くの高等学校化学の教科書に掲載されている。しかし, 有毒な二酸化窒素の気体や劇物である濃硝酸を用いること, またドラフト等が必要なこと等多くの課題がある。さらに, 化学平衡の移動に伴う二酸化窒素による褐色の変化は一瞬であり, 観察は容易ではない。本研究では, シリンジや活栓コックを用いたマイクロスケール実験による教材開発を行った。個別実験によって, 生徒が確認できるまで化学平衡の移動を繰り返し観察することが可能になった。さらに, 試薬の取り扱いにおいても安全性が向上した。
本教材を用いて公立高等学校で授業実践を行い, 教材の有効性について検証した。授業後のアンケートの結果, 本教材は, マイクロスケール実験の特徴でもある個別実験を活かすことで, 生徒に実感を伴った理解を促すことができた。