理科教育学研究
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原著論文
小学生の理科における仮説設定能力に影響を及ぼす諸要因の因果モデル
―第6 学年の児童を対象とした質問紙調査の結果に基づいて―
山田 貴之小林 辰至
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2014 年 55 巻 3 号 p. 351-361

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抄録
本研究の目的は, 小学生の理科における仮説設定能力に影響を及ぼす諸要因の因果モデルを明らかにするとともに, 指導方法の考案に向けた示唆を得ることである。
この目的を達成するために, まず, 第6学年の児童322名を対象として, 45項目からなる質問紙調査を実施し, 「仮説設定能力」に影響を及ぼす五つの因子として「豊かな自然体験」, 「理科への好感度」, 「算数への好感度」, 「自然や科学技術への興味・関心」, 「理科への自信」を同定した。次に, 「仮説設定能力」を「変数の同定」と「因果関係の認識」の二つの観点で評価し, その回答を得点化した。そして, これら七つの変数についてパス図を作成し, パス解析を行った。その結果, 以下の6点が明らかとなった。
①「自然や科学技術への興味・関心」と「豊かな自然体験」は共変動し, 「変数の同定」に影響を及ぼす因果モデルの初発の段階に位置している。
②「自然や科学技術への興味・関心」と「豊かな自然体験」は, 「理科への自信」に直接的影響を及ぼしている。
③「理科への好感度」は, 「自然や科学技術への興味・関心」と「豊かな自然体験」から影響を受け, 「算数への好感度」に直接的影響を及ぼしている。
④「算数への好感度」は, 「自然や科学技術への興味・関心」と「理科への好感度」から影響を受け, 「理科への自信」に直接的影響を及ぼしている。
⑤「理科への自信」は, 「自然や科学技術への興味・関心」, 「豊かな自然体験」, 及び「算数への好感度」から影響を受け, 「変数の同定」に直接的影響を及ぼしている。
⑥「変数の同定」は, 「因果関係の認識」に強い直接的影響を及ぼしている。
これらの結果を踏まえ, 小学生の理科における仮説設定能力を育成するためには, 自然事象から同定した変数を因果関係として認識させ, 仮説を文章で表現させる指導の可能性を裏付ける根拠と示唆を得ることができた。
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© ©2014 日本理科教育学会
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