理科教育学研究
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資料論文
高校入試を利用した中学校理科教員志望学生の理科の学力調査
―沖縄県立高校入試と琉球大学を例に―
福元(呉屋) 美咲吉田 はるか吉田 安規良
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2015 年 56 巻 2 号 p. 261-270

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抄録

中学校理科教員養成の在り方を検討するため, 琉球大学で中学校理科教員免許の取得を希望する「理科教育法A」の受講学生32名に, 平成26年度沖縄県高等学校入学者選抜学力検査(県立高校入試)の理科の問題(60点満点)を解答させ, 解答状況や比較的正答率の低い問題の誤答傾向等を分析した。
その結果, 彼らの平均点は41.1点で, 各問題別正答率の平均は69.0%だった。この結果をMann-WhitneyのU検定を用いて所属学部別, 性別, 出身中学校所在地別でそれぞれ比較したが, いずれも平均点に有意差は見られなかった。受講学生と受検生との問題別正答率には中程度の正の相関があった。「生徒が苦手な問題は教員の卵も苦手」であり, その部分の生徒の学力向上には教員の学力向上も必要だと言える。「低得点学生が全員不正解の問題」や「受講学生の正答率が受検生を下回った問題」の大部分は知識・理解を評価する問題で, 受講学生の正答率が予想正答率を大きく下回った問題の上位3問は思考・判断・表現を評価する問題だった。無解答者が4人以上の問題は3問で, 1問は漢字で解答する知識・理解を評価する問題で, 2問は地学領域の計算問題で技能を評価する問題だった。この結果に対して7名の受講学生から「これまでの理科の授業は受験対策が主であり学習は暗記に頼っていた」という回答があった。彼らの多くは, 暗記に頼った学習によって知識の定着が弱く, 問題の解き方や科学的な現象についても論理的に理解せずに丸暗記してきたと考えられる。

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© 2015 一般社団法人 日本理科教育学会
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