2016 年 56 巻 4 号 p. 469-480
本研究では, キー・コンピテンシーを基にして, 理科教育において育成すべき資質・能力を, 協同的な問題解決によって科学概念を構築し表現する能力と捉えた。その育成を促す教授・学習方略の実践を行うことを目的として, Taylorらの提案した学習環境のデザインの枠組みである「構成主義に基づく学習環境の五つの鍵となる要素(five key dimensions of critical constructivist learning environment)」に基づいて理科授業を計画・実践した。実践した授業は, 小学校第4学年の空気の温度変化による体積変化の学習である。授業を分析した結果, (1)児童が協同的に問題解決を行っていた, (2)児童は自らの考えをパフォーマンスとして表出し, 学習を進める中で, それを深化させていた, (3)教師は児童のパフォーマンスをアセスメントし, それに基づいて支援を行っていた, ことが明らかになった。本研究で計画・実践した理科授業は, 資質・能力の育成を促す教授・学習方略が具現化されており, 理科授業を計画する枠組みとして, Taylorらの提案が有用であることが明らかになった。