理科教育学研究
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原著論文
中学生の科学的モデルに対するメタ的な認識の実態
―大学生との比較を中心として―
雲財 寛松浦 拓也
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2016 年 57 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

本研究は, 中学生の科学的モデルに対するメタ的な認識に着目し, その実態を明らかにすることを目的とした。このため, 公立中学校の第3学年227名, 国立大学の理系学生200名を対象に, 20項目からなる質問紙調査を実施し, 理系学生との比較を通して中学生の実態を顕在化させることを意図した。その結果, 中学生は, 大学生と比べて科学的モデルに対するメタ的な認識が確立していないことが明らかになった。また, 中学生の傾向としては, モデルを, 目に見えにくい現象を可視化させたり, 複雑な現象を単純化させたりするものとして捉える一方で, モデルは現象の説明や予測に使われるものであることや, 暫定的なものであることについての認識が十分に確立していないことが明らかになった。特に, モデルが現象の説明や予測に使われるという, モデルの目的に関する認識は大学生においても相対的に低くなっており, 課題となりうることも明らかになった。これらの実態を踏まえ, 科学的モデルを用いた推論(モデルベース推論)を促進させるためには, 様々な学習場面においてモデルを用いて推論させ, モデルが役に立つことを実感させる必要があることを指摘した。

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© 2016 日本理科教育学会
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