2017 年 57 巻 3 号 p. 261-271
本研究の目的は, Chin and Osborne(2010a)から根拠付き主張の発言を促進するための教授方略とデザイン要素を導き出し, それらの日本の理科授業に対する有効性を検証することであった。デザイン要素とは, 教授方略を実際の授業で反映させるための具体的なガイドを意味している。最初に, 根拠付き主張の発言を促進するための教授方略とデザイン要素について概観した。次に, 教授方略とデザイン要素の反映された実験授業を実施した。その後, 実験授業で行われたアーギュメンテーションの発言記録から, 根拠付き主張を発言できた学習者の人数変化について検討し, 教授方略とデザイン要素の有効性を検証した。評価の結果として, 根拠付き主張を発言できた学習者の人数は, 授業の序盤から終盤にかけて有意に増加した。以上より, Chin and Osborne(2010a)から導き出された教授方略とデザイン要素は, 日本の理科授業において, 学習者の根拠付き主張の発言を促進する上で有効であることが示唆された。