理科教育学研究
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総説論文
物質量amount of substanceを対象とした理科教育学の研究
―高大接続・大学入試改革と連動した高等学校化学教育の質確保・向上, 大学のリメディアル教育への対応を目的として―
杉本 剛
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2017 年 58 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

物質量は, 国際単位系(SI)基本単位の1つであり, 高等学校化学の導入段階における最も重要な概念の1つである。本研究は, 物質量を対象とした理科教育学の研究をレビューすることを目的とし, 1978年以降の日本における高等学校化学教育を対象とした研究をレビューした。これまでの研究では, 1. 教科書内容の分析, 2. 生徒の実態調査, 3. 指導の実態調査, 4. 学習の理解検討, 5. 学習指導, 6. 教材・教具開発, 7. 実験, 8. 大学入学試験, 9. 教師教育の観点でまとめられる研究が行われてきた。だが, 高等学校化学教育には現状課題として, 教育再生実行会議第四次提言(2013年), 中央教育審議会答申(2014年)などが示す要請から, 1. 高大接続・大学入試改革と連動した高等学校教育の質の確保・向上への対応, また, 大学入学後の学習課題の要請から, 2. 大学のリメディアル教育の逼迫化への対応があげられる。研究の今後の方向性には例として, 1. 科学的な概念を使用して考え説明する学習活動を充実させる過程における, 生徒の考えを表現させ評価することを追究する学習指導法・評価法研究の進展, 大学入学後の学修に必要な関連他分野との円滑な接続を意図した, 中等教育カリキュラム開発の進展, 2. 必履修科目に初歩的な物質量の学習を加え, 学習内容自体の多様性を持たせながら必修化し, 高等学校までの理科の必要最低限の知識・技能や教養を確保させる科目開発が必要であると考えられた。

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© 2017 日本理科教育学会
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