本研究は, 中学校入学直後の理科の定期テストと理科の自己効力の形成との関係を明らかにすることを目的とした。研究1では, 中学校1年生を対象に, 2度の定期テスト前後の4回にわたる縦断的な量的調査を実施した。研究2では, 中学校入学後の最初の定期テストに着目し, 生徒に対してインタビュー調査を実施し, 定期テストにより理科の自己効力が変容する背景を検討した。研究1と研究2という異なるアプローチにより, 中学校入学後最初の定期テストが相対的な自己評価を介して自己効力の低下を引き起こしていることが明らかになった。またその要因として, 小学校のテストの経験などから, 本人に見合わない高い目標設定がなされるが, 実際には思った通りの得点をとることができず, 様々な否定的な感情や認知が生起される事などが示唆された。本研究により, わが国の生徒の理科の学習意欲の低下の要因の一つを明らかにし, 今後の理科の学習意欲の向上に向けての新たな視点を提供することができた。