小学校理科において児童の問題解決能力の育成が求められている一方で, 小学校教員を目指す大学生の問題解決能力の低さが指摘されている。本研究では, 教員養成学部に所属し小学校教員免許の取得を希望する大学生を対象とし, 生物領域においてデータセットを用いた仮説検証型の学習を行うことで, 学生の問題解決能力に影響が見られるか検証した。密度効果を題材に「集団の密度が増加すると個体のどのような性質が変化するのか」という問いを設定し, 学生1人ひとりに自身の考えをもとに問いに対する仮説を設定させ, 仮説を検証するための変数を設定させた。次に, あらかじめ作成しておいた密度と個体の形質についてのデータセットを学生に提示し, そのなかから必要な変数を選択してグラフを作成させ, 結果から考察を行わせた。そして, 授業前と授業2週間後で学生の「実験計画立案力」, 「変数設定能力」, 「結果の予想設定力」を評価した。その結果, 授業前に比べ授業2週間後では, 学生の「変数設定能力」と「結果の予想設定力」が向上していることが示された。データセットを用いた学習には実験の準備や機器などが必要ないこと, 検証結果が実験の技能などに左右されず, 仮説に対応した考察を確実に導けることなどの利点が挙げられ, 限られた時間や環境の中で, 大学生の探究過程の理解や問題解決能力の向上に対し安定した効果が得られると期待される。