理科教育学研究
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原著論文
花のつくりの観察教材としての百合花茶の検討
佐藤 陽子太田 尚孝
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2018 年 58 巻 3 号 p. 251-259

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抄録

現在, 小・中学校の授業や科学イベントなどで, 生花の解剖実験が行われている。本研究では, 現時点で報告されていない乾物状態の百合花茶の解剖を試みた。ここでは, 筆者が開発した飲用可能な桜花の塩漬けの解剖教材と, 食用可能な生花状態のエディブルフラワーの解剖教材を参考にして研究を推進した。結果として, 乾燥した花が吸水すると生花とほぼ同様のつくりに戻せることや, 食材としての花を「飲用可能な教材」に出来ることが明らかになった。本教材の価値は, 生き物を大切にする心情を慮りながら花の解剖ができることだと考えられる。本研究によって, 次の結論が判明した。①乾物状態の百合花茶では, 外花被, 内花被, おしべ, 葯, 花粉, めしべ, 柱頭, 花柱, 子房の観察が可能であった。だが, 外花被と内花被は割れやすい傾向が見受けられた。②熱湯を浸潤させた百合花茶では, 外花被, 内花被, おしべ, 葯, めしべ, 柱頭, 花柱, 子房の観察が可能であった。特に, この実験は, 外花被と内花被の観察に適していた。③百合花茶の解剖を実験群, 生花の百合の解剖を対照群としてアンケート調査を実施した。両群間では, 観察可能な花の部位, これらの数, めしべとおしべの構造に対する理解度に有意差は見られなかった。また, 実験群では, めしべの柱頭がべたべたしていることや, めしべの柱頭に花粉がつくと子孫ができることを理解できた来場者は有意に少なかった。

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© 2018 日本理科教育学会
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