理科教育学研究
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原著論文
理科探究活動を見据えた数式に基づかない解追究プロセスの指導
―切り紙構造の力学応答を一例として―
仲野 純章
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2018 年 58 巻 3 号 p. 271-278

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抄録

近年, 生徒が主体的に課題設定し, 問題解決活動を展開する「探究活動」の教育効果が注目され, 理科においても積極的に導入されつつある。限りある取り組み時間の中で探究活動をスムーズに展開していくためには, 日常的に問題解決能力を高める指導を取り入れていくことが望ましい。問題解決能力を高めるには, 物事の本質を理解し, 幅・深さ両面でより豊かな知識を持つという知識面の能力を高めることも当然必要であるが, 一方で, 情報や数値データをどう解釈し, 処理するかという思考面の能力を高めることも必要である。思考面の能力を高めるにあたっては, 公式等の数式によるアプローチで解を求める能力に加え, 必ずしも数式に頼らないアプローチで解を見いだす能力も育成していかねばならない。今回, 切り紙構造の力学応答を題材にした授業実践を通して, 数式に基づかない解追究プロセスの指導の有効性を検証した。その結果, 変数の多い切り紙構造の変形挙動を考えるにあたり, 三角グラフによる図解化アプローチを指導することで, データ解釈・処理パフォーマンスの向上が見られた。また, 活動後の意識調査においても, 習得アプローチの積極的な利用意思に繋がることも示された。こうした授業実践でのパフォーマンスと意識調査の両面から, 数式に基づかない解追究プロセスの指導の有効性が確認された。

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© 2018 日本理科教育学会
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