理科教育学研究
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原著論文
小・中学校理科教科書に見られるグラフとその指導の特徴
―グラフの構成要素に着目した内容分析から―
末廣 渉内ノ倉 真吾
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2018 年 59 巻 1 号 p. 67-77

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抄録

本研究では, 小・中学校理科教科書に見られるグラフを, 変数及びグラフの種類に着目した量的傾向の調査と, グラフの構成・解釈の指導に関する内容構成の調査を行った。その結果, 四点明らかとなった。一点目として, 中学校の方が小学校に対し, 総計, 1頁当たりともに教科書に見られるグラフ数は多かった。二点目として, 小学校から中学校へと校種が移行すると, 教科書に見られるグラフの種類および変数の種類の割合が変化していた。三点目として, 小学校の教科書に見られる直線・曲線グラフは点, 軸の名称, 変数の単位など一般的なグラフの構成要素を多く含んでいたのに対し, 中学校では, 具体的な数値を特定せずに変化の傾向のみを捉える, より抽象度の高いグラフの割合が高くなっていた。四点目として, 日本の個別教科書の事例検討を通じて, 当該教科書におけるグラフの構成・解釈の指導は, グラフで表す目的, グラフの構成の手続き, 測定の不確実性など, グラフの構成に焦点を当てていた。一方, 変数の性質や目的を踏まえたグラフの種類の選択, グラフの解釈, 独立変数・従属変数の説明, 近似線の数式化については, 言及されていなかった。これらの分析から, 教科書の内容構成の追加・拡充の視点として, 変数の性質とグラフの種類の選択の学習, グラフの構成・解釈に関する手続き的知識と認識論的な知識の関連付けを指摘した。

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© 2018 日本理科教育学会
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