2019 年 59 巻 3 号 p. 357-366
本研究では,理科学習において,予想の根拠とする情報を見直した上で,自分や他者の実験の結果・考察をクリティカルに見る活動を取り入れた指導法を考案した。この指導法の効果を検証するために,小学校6年生30名を対象に,「ものの燃え方と空気」の単元の授業実践を行い,小学生のクリティカル・シンキング能力の向上を分析した。実践では,まず,予想の根拠となる日常の情報源を見直し,その信頼度表を児童の話し合いを通じて作成させた。次に,自分の実験の妥当性や,他者の実験結果や考察の妥当性を検討するためのワークシートを開発し,実験後に記入させた。全3回の実験において,各実験ごとのワークシートの記述分析の結果,実験・考察を行うごとに,信頼度の高い情報を基に予想する力や,実験の結果や考察をクリティカルに見る力が高まることが見出された。さらに,質問紙分析により,クリティカル・シンキングの態度的側面の向上も見出された。