理科教育学研究
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資料論文
Society 5.0の実現に向けた次代の科学技術イノベーションを牽引する人材育成に貢献する理科教育・理科指導方法の検討
―小学校教師によるミニディベートの調査分析より―
杉本 剛
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2019 年 60 巻 2 号 p. 473-481

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抄録

第3期教育振興基本計画において,2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項として,Society 5.0の実現が,重要な教育政策課題のひとつとしてあげられた。Society 5.0は,2016年,第5期科学技術基本計画において,情報社会に続く新たな社会として提唱された。2016年以降,官界・学界・経済界あげて,Society 5.0の実現と,Society 5.0の実現に向けて科学技術イノベーション(以下,STI)が果たすべき役割の大きさが唱えられ,その実現のための人材育成の重要性が示されている。本研究は,Society 5.0の実現に向け,小学校教師を対象として調査した,理科授業における科学技術イノベーション人材育成教育についての見解・要望,理科指導方法についての見解・要望を考察し,次代のSTIを牽引する人材育成に貢献する今後の理科教育の方向を検討することを目的とした。調査の結果,小学校理科授業において,科学技術イノベーション人材育成教育の積極的な展開については,必要であると賛成である見解が,5グループ中3グループ,個人78.3%であった。また,どのような指導方法を行えば良いかについては,理科専科の教師・企業の研究員の活用などをあげる回答が多かったが,その他個別に,児童の関心に応じた学びの場の設定など,多岐な見解があげられた。今後の研究の方向の例として,多様なステークホルダーとの科学コミュニケーションスキル向上を課した理科教材開発研究などがあると考える。例示したような研究により,Society 5.0という新たな社会の創出を理科教育学が先導することを使命として,今後,研究・実践が充実されることが期待されると考える。

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© 2019 日本理科教育学会
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