2020 年 61 巻 1 号 p. 153-165
本研究では,変容的アセスメントの方略に基づいて,理科授業を計画・実践し,実践した授業を質的に分析・評価した。変容的アセスメントの方略は,Popham(2008)の提案を援用した。Pophamは,変容的アセスメントの実践の鍵は,ラーニング・プログレッションズ(LPs)の構想であると提案し,LPsの構想手順を4つの段階で示している。それは,(1)カリキュラム目標の理解,(2)到達を促進する知識と認知的技能の同定,(3)アセスメントする方法の判断,(4)指導する順序の決定である。小学校第3学年「物と重さ」を対象に,4つの段階に従いLPsを構想し,それに基づいて変容的アセスメントの実践を行った。その結果,教師は子どもがカリキュラム目標へ到達するための支援として,到達を促進する知識と認知的技能の表出を促し,それを価値づけていた。子どもは到達を促進する知識と認知的技能を用いながら,カリキュラム目標へと到達していた。日本の理科教育において,Pophamの変容的アセスメントの方略が援用可能であることが明らかになった。