2020 年 61 巻 2 号 p. 229-240
学校で教えられる理科は他教科よりも生きていくうえで重要でない学習と認識されている。科学的リテラシーは今日の社会ですべての人が身につけておくべき科学的な知識,能力,態度であるが,子どもたちにとって理科は科学的リテラシーを身につける学習とは認識されていない。本研究は,中核的理科教員を活用して,学校全体の理科授業を改善するシステミックリフォームに継続的に取り組むことで,学校全体で子どもたちの理科に対する科学的リテラシーとしての認識を改善するとともに,それが子どもたちの理科学力にどう影響するかを明らかにすることを目的とした。埼玉県内の12の公立小中学校で平成28~30年度に継続して取り組んだ結果,児童生徒の科学的リテラシーの認識が学校全体で改善されるとともに,認識の変化が理科学力の変化に及ぼす影響,およびその性差が明らかになった。学校における科学的リテラシーの認識を高める理科授業を実践し普及させるために,中核的理科教員の養成と活用が有効であることが示唆された。