本研究では,生徒のデータ解釈能力の現状と課題を明らかにし,この現状を踏まえて,データ解釈能力の育成指導を課題として示唆することを目的とした。その結果,選択式問題において,「グラフから独立変数や従属変数を区別し,理解してパターンや傾向を読み取り推論する」,記述式問題において,「図表から独立変数や従属変数を区別し,理解してパターンや傾向を読み取り推論する」「グラフから独立変数や従属変数を区別し,理解してパターンや傾向を読み取り推論する」「図表データを数式化し一般化する」問題に困難を有している現状が明らかとなった。そして,課題として,「データ解釈した際のパターンや傾向には原因があるので,その原因を根拠として推論させること」「変則データを含んで読み取るといったデータ解釈観をメタ理解させること」「同一グラフ上にある2つのパターンや傾向が存在するグラフを使用し,合わせて推論させること」「データ解釈時に用いる『一般的』という表現の意味内容を理解させること」「表データをグラフに変換し,関係式を導出といったデータ解釈のプロセス,換言すれば,データ解釈のプロセス観,これをメタ理解させること」が挙げられた。