中学1学年の生徒の大多数が溶液中の物質は「目に見えない小さな粒(粒子)になる」と教科書で学習している。一方で,その粒子の大きさのとらえ方は生徒によって様々である。また,中学1学年の生徒に粒子概念を定着させる取り組みはあるが,特殊な器具を用いたりすることが見受けられる。本実践ではコロイド溶液とセロハン膜を用いた透析実験を通して,生徒が「目に見えない小さな粒子」という表現に対して正しいイメージを持てるようになるかを検証している。セロハンは中学2学年および中学3学年でも使用する機会のある物質で,中学1学年から使い慣れておくことは以後の学習理解において有用である。また,使用した塩化鉄(Ⅲ)は可溶性で有色のため,知識を有しない中学1学年の生徒であっても実験で起きている現象を理解しやすい。中学1学年に対して実施した本実践の結果,塩化鉄(Ⅲ)水溶液やセロハンなど,初めて使用する物質であっても実験中の変化や既習内容をもとに,セロハン膜を通り抜けられない物質の粒子と通り抜けられる物質の粒子の違いを考え,その考えをもとに溶液中の粒子の大きさを考察できることが分かった。また,実践後の調査により生徒が溶液中の「目に見えない小さな粒子」の大きさを具体的にイメージできていることが確認できた。さらに後日行った確認テストの結果から,そのイメージが定着していることも確認できた。したがって,本実践は溶液中の粒子の大きさを具体的に理解させる上で効果的であると考えられる。