理科教育学研究
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資料論文
天球儀を使用できる理科教員の育成と小型広角カメラを内部に組み込んだ透視天球儀の教具としての評価
―天球儀の使用法の習得を意図した教師教育実践と授業時の留意事項―
吉田 安規良
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2023 年 63 巻 3 号 p. 497-512

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抄録

天球儀は中学校で天体のみかけの動き(日周運動や年周運動)と地球の自転・公転との関係を学習する際に用いられる教具である。しかし直感的に操作できないものであり,操作方法を十分に習得せずに使用することが困難な教具でもある。そこで,教員免許状更新講習や理科の指導法科目の中で天球儀を操作する教師教育の機会を設定し,天球儀を利用した授業―特に天球儀の内側・外側の両方から見える様子を容易に確認できるようにウェアラブルカメラ(アクションカム)を天球儀内部に取り付けた市販の透視天球儀を授業で有効利用する際―に関する留意事項を整理した。受講者には天球や天球儀の認識が不十分な者や,高度な専門性や十分な知識技能や能力を有していない者が含まれており,誰一人として受講前には天球儀を適切に操作できなかった。しかし180分もあれば,全員が天球儀を適切に操作できるようになった。天球儀を用いる際には,星座の位置関係(描かれ方)に注意し,問題演習時には星座ではなく恒星を指し示して問うことが留意事項である。改造した透視天球儀を利用する際には,カメラがとらえた画像の視認性を向上させることと,組み立てに時間がかかることに留意する必要がある。受講者は天球儀を授業で用いるメリットとして, 目の前で模型を見て立体的に観察したり自らの手で操作したりすることで学習内容の理解を促し,心的視点移動させた際の情景の想起を容易にすることを挙げつつも,天球儀を必要数揃えること,時間の確保や指導の難しさに起因する「実際の授業で使用することへの困難さ」を指摘した。また,操作方法や学習内容の理解を促すための指導法に,生徒の実態に応じた工夫や配慮が必要だと認識した。「授業者として自分の目の前の生徒にどうするか」という実際の授業を想定する能力の育成が,教師教育には必要不可欠であり,特に教員養成段階で留意しなければならない。

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© 2023 日本理科教育学会
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