2025 年 66 巻 2 号 p. 437-451
本研究では,「学びに向かう力,人間性等」を高めるために,科学的探究過程 1)において個別実験を導入した授業に協働的な学びを取り入れることによって,生徒が他者や教材と豊かに関わり合いながら自らの課題を粘り強く解決していく指導法を開発した。手立てIでは,従来の年間指導計画の範囲内で,学習者主体の「探究の程度」を,[全体][一部]または[教師主導]とし,授業時数の不足を防ぐカリキュラムマネジメントを行うことで,授業に個別学習と協働学習の時間を意図的に設定した。手立てIIでは,中学校第3学年の単元「化学変化とイオン」において,マイクロスケール実験を活用した個別実験用の教材を開発した。手立てIIIでは,生徒が協働的に問題を見通し,振り返ることができるワークシートを開発し,毎時間使用した。本指導法の効果を検証するために,手立てI~IIIを講じた授業を調査校で実施し,協力校で標準的な授業を行った結果を比較した。質問紙調査において調査校の生徒は協力校の生徒に比べて,「学びに向かう力,人間性等」の全項目において有意に意識が高いことが分かった。対話のプロトコル調査,ワークシート分析,インタビュー調査から,「豊かな関わり合い」の実践によって,対話による思考の変容,対話に対しての価値観の変容を促す効果があることが示唆された。また,従来の年間指導計画の範囲内で,小単元ごとに科学的探究過程に沿った授業を行うことが可能であることが示された。