2000 年 1 巻 1 号 p. 5-6
原爆被爆者の健康調査が50年以上にわたって,日米の共同研究機関である放射線影響研究所で行われている。原爆被爆者調査の最も重要な結果は,被曝放射線の増加とともにがんのリスクが上昇するということである。良く知られている白血病のリスクの他に肺がん,乳がん,胃がん,甲状腺がんなどの固形がんのリスクも上昇している。原爆被爆者の子どもについての遺伝的影響は,これまでのところ,どの指標でみても有意な影響は観察されていない。胎内被爆者の調査から,小頭症,精神遅滞の頻度が被曝放射線とともに増加していることが観察されている。これらの研究結果は,原爆被爆者の健康保持のみならず,放射線防護基準の設定等にも役立っている。