日本女性科学者の会学術誌
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国際会議ICWES11論文特集「環境保全のための科学と技術」
チッ化硼素処理をしたステンレス鋼薄膜の水素透過特性
板倉 明子土佐 正弘
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2000 年 1 巻 1 号 p. 11-14

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抄録

半導体の加工プロセスなどには,高真空,超高真空の作業環境が必要とされ,そのために真空容器を長時間真空排気する,容器全体の加熱脱ガスを行うなどの作業が必要になってくる。チッ化硼素(以下 BN)処理を施したステンレス鋼は大気曝露した際の酸素,炭素などの吸着が少なく,また真空排気時の脱離が速いことなどから,真空容器材に適していると考えられてきた。近年,原子分子を扱う表面の研究が盛んに行われ,そのために求められる真空環境も10-10 Paなどの,極高真空領域になってきている。極高真空環境での主な残留ガスは,大気や低真空時とは異なり,水素である。水素は吸着していたものの脱離の他,容器材に含有されたものが主な放出源となっている。BN処理ステンレス鋼の水素に対する性質,特に,水素透過に及ぼす影響を測定し,この処理方法が水素の吸着量を押さえるだけで無く,背面からの透過量をー桁以上低減させることを発見した。また,処理膜の膜厚が低減効果に影響しないことから,処理膜上での水素の透過は表面反応が律則になっていると考えられる。BN処理については,ステンレス鋼表面にステンレスとBNを共蒸着し,熱処理を行ってBNを偏析させるという方法で行った。この方法でステンレス鋼表面は,C軸は移行した6方晶BNであることが分かっている。

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