日本女性科学者の会学術誌
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総説
2型糖尿病の医療経済
~医療費とQOL
稲田 扇
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2010 年 11 巻 1 号 p. 51-56

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抄録

2型糖尿病患者の1人あたり年間外来医療費及び1回あたり外来医療費は、合併症なし130,473 ± 104,147 (Mean ± SD) 円及び13,046 ± 7,568円、合併症1種類151,431 ± 130,529円及び16,206 ± 10,777円、2種類240,088 ± 148,022円及び18,357 ± 10,409円、3種類263,150 ± 141,754円及び23,739 ± 11,068円、4種類355,343 ± 177,080円及び30,822 ± 16,148円である。透析患者の1人あたり1ヶ月医療費は428,609 ± 40,876円である。Quality Of Life (KDQOL-SF :腎疾患特異的尺度+包括的尺度) の総合評価は、糖尿病ではない透析患者 (透析非糖尿病患者) 63.94 ± 15.96点、糖尿病の透析患者 (透析糖尿病患者) 47.32 ± 17.39点である。透析糖尿病患者と透析をしていない糖尿病患者 (非透析糖尿病患者) の両者を併せてSF36 (包括的尺度) のスコアを合併症別にみると、合併症なし73.09 ± 9.57点、合併症1種類67.71 ± 8.33点、2種類60.17 ± 8.61点、3種類37.94 ± 9.24点、4種類36.42 ± 14.52点と合併症数が増えるにつれてスコアが低くなる。KDQOL-SFでは、罹病期間が短い透析糖尿病患者の方が透析非糖尿病患者よりすべての項目においてスコアが低いことから、糖尿病をもつ患者が透析を導入した場合、QOLへの悪影響がより大きいといえる。つまり、短期間でQOLを急激に下げ、医療費を一気に押し上げる透析に至らせないように糖尿病患者の教育指導を強化することが重要なポイントである。QOLや医療費削減には、近年、政府が力を入れている糖尿病の1次予防だけでなく、2次・3次予防も共に進めていくことが必要である。

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