2014 年 14 巻 1 号 p. 10-15
近年、統合失調症の病態メカニズムの一つとしてNMDA型グルタミン酸受容体を介する神経伝達の低下仮説—グルタミン酸仮説—が提唱されている。そのため、NMDA受容体の内在性コ・アゴニストであり本受容体機能の促進作用をもつD-セリンが、統合失調症の病態との関連や新規治療法開発の視点から注目されている。最近我々は、前頭葉皮質の細胞外のD-セリン濃度が、中性アミノ酸トランスポーターAsc-1の阻害、カルシウム透過型AMPA受容体の刺激、および本脳部位の神経細胞に含まれるセリンラセマーゼの欠失等によって変化することを明らかにした。以上のことから、これらの分子がD-セリンシグナルへの影響を通してNMDA受容体機能を制御している可能性が示唆され、統合失調症の病態解析や新しい治療法開発の標的分子として有用と考えられた。