日本女性科学者の会学術誌
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総説
病原細菌による宿主粘膜感染の分子機構の解明
金 玟秀
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2017 年 17 巻 1 号 p. 8-18

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抄録

蛋白質の翻訳後修飾の一つであるユビキチン修飾経路はヒトの高次生命現象や疾患に深く関わることが古くより知られている。近年、病原細菌やウイルスの感染症においても、これらの病原体が宿主細胞のユビキチン修飾経路を制御する分子を有し、感染成立に必要な細胞応答を引き起こしていることが明らかになってきた。病原細菌が宿主細胞に分泌する分子(病原因子)の中には、(1)ユビキチン化関連の酵素活性を持つ分子、(2)宿主細胞内でユビキチン修飾を受ける分子、(3)宿主のユビキチン分解経路をハイシャックする分子が同定されている。これらの病原因子の機能が構造生物学的な手法を含めた解析手法により解明され、病原細菌の新たな感染戦略として理解されつつある。本稿では、腸管病原細菌の感染を中心に、宿主のユビキチン修飾経路を利用する病原因子及びその作用機序について概説する。

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© 2017 日本女性科学者の会
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