日本女性科学者の会学術誌
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総説
腫瘍血管内皮細胞の特異性
樋田 京子
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2018 年 18 巻 1 号 p. 12-17

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抄録

腫瘍組織において、血管は栄養や酸素の供給、転移の経路になるなど、がんの進展に重要な役割を果たしている。近年、新しく増生される腫瘍血管を標的とした血管新生阻害療法が、がん治療法の一つとして広く行われているが、現在の血管新生阻害剤は単独でのがんの根治にはいたっていない。腫瘍血管新生制御には、腫瘍血管およびそれを構成する血管内皮細胞の性質を分子生物学的に理解する必要がある。腫瘍組織にわずかな割合しか存在しない腫瘍血管内皮細胞を分離・培養し、その性質を解析することにより、その異常性が明らかになってきた。さらに、がん微小環境の様々な因子が、血管内皮細胞により多様で複雑な性質をもたらすことがわかってきた。がんを養う血管内皮細胞の特性解明が、がん制御の一助になると期待される。

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© 2018 日本女性科学者の会
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