2017 年 32 巻 1 号 p. 82-88
症例は49歳,女性。頭部悪性黒色腫切除後12ヵ月目のPET-CTで右乳腺内にFDGの集積を認めた。同部からの針生検を行ったところ,腫瘍は一部にメラニンを含有する細胞を認め,免疫染色でHMB45とMelan-Aが弱陽性であり,悪性黒色腫の乳腺転移と診断した。BRAF遺伝子変異陽性であったためvemurafenibの投与を開始したところ,転移病巣は著明に縮小しその後も維持していたが,投与21ヵ月後に再増大を認め,nivolumabへ変更するも縮小効果は得られなかった。しかし,画像検査で右乳腺以外には転移巣を認めなかったため,乳房部分切除術を施行した。術後6ヵ月(乳腺転移診断後42ヵ月)の現在,再発・転移を認めていない。悪性黒色腫の乳腺転移は他臓器転移を伴っていることが多く,孤立性転移は稀である。孤立性乳腺転移であれば,転移巣の切除により予後を改善する可能性がある。