2021 年 36 巻 1 号 p. 81-85
61歳,女性。約1年前から左上眼瞼の無症候性腫瘤を自覚した。近医眼科で霰粒腫として治療されたが緩徐に増大したため紹介元で皮膚生検を施行し,悪性腫瘍を疑われ紹介となった。左上眼瞼の外寄りの瞼縁~眼瞼結膜にかけて,7×4mm大の表面平滑で光沢を有する境界比較的明瞭な淡灰紅色局面があり,同部の睫毛は消失していた。前医生検の病理組織では脂腺分化はなく,異型な核を有する好酸性の胞体をもつ腫瘍細胞が不整な腺腔構造をとりながら増殖していた。生検標本からは腺癌,分類不能と診断した。腫瘍から7 mm離して切除した手術標本でも生検標本と同様の所見であったが,断頭分泌様の所見やGCDFP-15が一部陽性であり,全摘標本の腫瘍の局在も解剖学的にMoll腺の存在部位と一致していた。全身精査から腺癌の転移も否定し,最終的にMoll腺癌と診断した。