2011 年 10 巻 5 号 p. 417-423
32歳,女性。経膣分娩の8日後に 39°C 台の発熱と全身の紅斑が出現した。産褥熱が疑われ塩酸セフカペンピボキシルの内服を開始された。その2日後には下痢と粟粒大の膿疱が出現し,血圧低下を認めたため入院した。薬疹を疑い抗菌剤をシプロフロキサシンに変更してプレドニゾロンを開始した。開始後7日目頃には全身の紅斑は落屑を残して消失した。指趾と足底に膜様の落屑を認め toxic shock syndrome (TSS) を疑った。膣分泌物の培養で toxic shock syndrome toxin-1 産生性 MRSA が検出され,塩酸バンコマイシンの投与を行った。経腟分娩後に発熱と全身紅斑を認めた際には TSS も鑑別疾患の1つとして考慮する必要があると考えた。(皮膚の科学,10: 417-423, 2011)