ロキシスロマイシンをはじめとするマクロライド系の薬剤は,好中球性瘢痕性脱毛症などの治療にも用いられる。本研究ではロキシスロマイシンが毛包細胞に与える影響をヒト毛包細胞と類似した特性を有するイヌ毛包細胞,特にバルジ幹細胞に富んだケラチノサイトと毛乳頭細胞を用いて検討した。高濃度のロキシスロマイシンはケラチノサイト,毛乳頭細胞両方の in vitro での増殖能を抑制した。また,ロキシスロマイシンは増殖能に影響しない濃度では,ケラチノサイト分画におけるバルジ幹細胞のマーカー発現に影響を与えないが,毛乳頭細胞の特性を規定する因子の発現には影響を与え,特に WNT シグナル系を通じて毛乳頭細胞を活性化する可能性が示唆された。(皮膚の科学,増19: 4-10, 2012)