皮膚の科学
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症例
ステロイドと DDS の併用療法を経て,最終的には DDS のみでコントロールできた後天性表皮水疱症の1例
夏見 亜希加藤 敦子立石 千晴鶴田 大輔
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2015 年 14 巻 1 号 p. 1-5

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抄録

31歳,男性。胸部,被髪頭部の紅斑・水疱と口腔内びらんを認めた。ELISA では抗 BP180 抗体,抗 BP230 抗体,抗デスモグレイン1抗体,抗デスモグレイン3抗体はすべて陰性であった。病理組織学的所見では表皮下水疱を形成し,蛍光抗体直接法で表皮基底膜部に IgG・C3 が線状陽性,1M 食塩水剥離ヒト皮膚を用いた蛍光抗体間接法にて基底膜真皮側に線状に IgG の沈着を認めた。正常ヒト皮膚抽出タンパクを用いた免疫ブロット法で 290kDa の自己抗体が検出され,ELISA にて抗VII型コラーゲン抗体陽性であったことから後天性表皮水疱症と診断した。プレドニゾロン 15mg/day 全身投与を開始後も水疱の新生は治まらず,30mg/day まで増量も効果不十分であった。しかし DDS 75mg/day を併用したところ皮疹は軽快し,ステロイドを減量,中止後も再燃なく,現在は DDS 25mg/day 内服のみを継続している。口腔内病変は後天性表皮水疱症の過去の報告でも半数近くで記載されており,好発部位としての認識が重要である。後天性表皮水疱症の治療にはステロイドと DDS の併用が有効であるが,本症例ではこの併用療法が有効であったばかりでなく,最終的には DDS のみでコントロールできる状態になった点が特徴である。(皮膚の科学,14: 1-5, 2015)

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© 2015 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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